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特許庁再審査のアドバイザリーアクションに基づく、裁判官による差し止めの解除
| July 26, 2010
English Language Version (via IPWatchdog)
In re Swansonでの一連の出来事は周知であろう。本件では、陪審員は特許は有効かつ侵害されていると評決し、CAFCはその評決に基づく地裁判決を容認した。その後、侵害被疑者は米国特許庁に特許の再審査請求を行ったところ、米国特許庁は特許クレームを拒絶した。そして、すでに特許は有効であると判断されているにもかかわらず、CAFCは特許庁の拒絶判断を維持した。CAFCは、有効性は特許庁と裁判所とで異なる争点であると述べ、明らかに相反する結果を容認したのである。これはSwansonで示された注目すべき結論を踏襲するものであり、侵害被疑者の間で再審査がそれほどよく利用されるようになった理由の一つである。
フロリダ州南地区地方裁判所のJames Cohn判事は、Swansonのアプローチをさらに一歩進め、本件Flexiteek Americas v. PlasTEAK (Case No. 08-60996-civ-Cohn/Seltzer)において、問題の特許が無効であると判断した再審査のアドバイザリーアクションに基づき、本案差し止め命令を取り下げた。
Flexiteekは、PlasTEAKが合成チーク材の板張りに関する米国特許第6,895,881号を侵害しているとして提訴した。公判前、Cohn判事は、新規性および自明性の争点においてPlasTEAKはそれらにつき積極的抗弁の基礎をまったく主張しなかったとして、PlasTEAKを退ける略式判決（サマリージャッジメント）を出した。2009年6月の公判で陪審はPlasTEAKが‘881特許を文言侵害していると判断した。
Cohn判事は、今年2月にPlasTEAK に‘881特許を更に侵害しないよう命じた。同判事は、PlasTEAKが昨年11月に米国特許庁に再審査請求を行ったことも認識した上で、差し止め命令に次の条件を加えた。「裁判所または米国特許庁が‘881特許を無効または権利行使不可とする判断を行ったときは、PlasTEAKは本案差し止めを解除するように当裁判所に請求することができる。」
そして、その特許再審査手続きは速やかに行われ、PlasTEAKの再審査請求は受理された。そして唯一の特許クレームが新規性欠如および自明性で拒絶され、最後の拒絶理由が通知され、そして2010年6月3日、審査官は拒絶を維持するアドバイザリーアクションを出した。
前記アドバイザリーアクションに基づいて、Cohn判事は差し止めを解除した。同判事の分析コメントはSwansonの引用に始まり、裁判所によって先に出された特許有効の判断は「その後の訴訟も特許庁の再審査も拘束力するものではない」と判示した。Swansonでは、被告が民事訴訟で特許無効を証明できないことと、特許庁が特許無効と判断することとの相違点を明確に示しているとCohn判事は説明した。さらに同判事は、Swanson判決は陪審評決が基にあるのに対し、本件判決はPlasTEAKがディスカバリーに応答しなかったことが基にあるので、その拘束力はSwansonの場合よりもさらに小さいとも述べた。
さらにCohn判事は、「特許庁のアドバイザリーアクションは‘881特許の有効性に関する最新の判断であるというだけでなく、そのような争点に関する特別な専門家である者による実質的審査を経た後の結論でもある」と述べた。さらに同判事は、特許庁の無効判断が優先するべきであると述べた。
特許権者であるFlexiteekは、差し止めの維持により受けるPlasTEAKの損害よりも、差し止めの解除により受けるFlexiteekの損害の方が大きいと反論した。Cohn判事はこれに同意せず、「本案差し止めが解除されてから特許庁の無効判断が覆された場合に原告（Flexiteek）が被るであろう損害の額と異なり、本案差し止めが維持されて特許庁の無効決定が維持された場合に同原告が得るであろう金額が幾らになるかを決定することは困難である」と指摘した。
ただし、Cohn判事が自ら出した差し止め命令を特許庁のアドバイザリーアクションに基づいて自ら進んで解除したのは、CAFCの無効の判断と異なり、あくまで彼自身の判断であることには注意しなけらばならない。また、Cohn判事の判断は控訴を受けることは必至であろう。とはいえ、Cohn判事の判断は、特許有効性争点の権威が裁判所から特許庁へ移行している状況の更なる進展である。
